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前回の続き
患者:では、“何らかの原因”とはどういったものがあるんですか? 森本:一つは、口腔内に嫌気性細菌(酸素を嫌う細菌)と呼ばれる歯周病 性細菌が何種類かいて、それが何らかの原因でポケット内で増殖することによって、 ポケット内の酸素は減少していく。つまり嫌気度が上ることになり、活性酸素が発生 する。その活性酸素が歯肉の細胞を傷つけてしまう。で、その傷口から歯周病原性細菌 が入ってきて歯肉炎を起こすんだよ。 でも、この嫌気性細菌と呼ばれる歯周病原性細菌が何故増殖するのかははっきりとは 分かっていないんだよ。嫌気性細菌と呼ばれる歯周病原性細菌が増殖する理由は分か ってないけど、内毒素を出すのははっきりと分かっているんだよ。 患者:歯周病の原因で歯周病原性細菌以外の何か原因はあるんですか。 森本:前の虫歯の話と同様に、咬合力などの“外力”も歯周病の原因となっていると言われて いる。でも、まだまだ“外力”の研究は進んでいないんだね。 患者:でも、単純に歯周病原性細菌を殺せばいいと言う話ではないことは確かですね。 森本:そういうことなんだよ。で、歯周病になると、ずーっと歯周病が進行するかというとそうで はなくて、“静止期”と“活動期”があるんだよね。この“静止期”と“活動期”のサイクル は人によって全然違うんだよ。活動期が毎月来る人もいれば1年に2回来る人もいる。 これもまだまだ解明が進んでないんだけど、僕はストレスも関係しているんじゃないか と思っている。良くあるのが、年末や年度末の慌しい時や、転勤等で引越しした時な どの、何か忙しい時に活動期が来ることが多いんだね。 患者:ストレスを感じると歯にはどういう影響があるんでしょうか? 森本:ストレスを感じたり、忙しい時って自然と歯をグーッと噛み締めるよね。噛み合わせが 悪い、つまり正しく噛めてない人は力が歯のある箇所に集中してしまい、結果として歯 がグラグラしてしまうことがある。グラグラするとポケットが広がってしまう。さらに、忙 しいからといって歯の清掃が普段よりおろそかになったりすると、プラークが広がった ポケット内に溜まって歯周病原性細菌が一気に活性化して歯周病が進行してしまうこ とがあるんだよ。つまり、歯周病原性細菌だけを殺せばいいという話しでは無いという ことなんだね。 患者:つまり、一つの要因ではなく複合的な要因によって歯周病が発症、進行するということ なんですね。 森本:どんなに一生懸命プラークコントロールをしても、それだけではダメで、力のコントロー ルもしてやらないと歯周病の予防に繋がらないと僕は強く思っているんだよ。 患者:“プラークコントロール”と“力のコントロール”が歯周病予防のキーワードということで すね。歯周病になってからではなく、いかに歯周病にならないかを考えていくのがとて も大事ということを強く実感しました。単に歯周病予防といっても、日々の歯磨きをしっ かりと行うだけでは不十分で、歯科医師さんに定期的に歯をチェックしてもらって、初 めて歯周病予防と呼べるんだと思います。 今回も大変勉強になりました。どうもありがとうございました。 森本:どうもありがとうございました。 #
by morimoto-dc
| 2007-05-22 00:00
| 歯周病
今回は歯周病について、対談形式でわかりやすく解説していきます。
患者:今回は歯周病についてお話をお伺いしていきます。宜しくお願い致します。 そもそも、歯周病とはそもそもどういった病気なのでしょうか? 森本:前に話した虫歯と一緒で生活習慣病の一種なんだよ。 歯周病という名前は付いているけれども口腔感染症とも言われているんだね。 感染症といっても本当の意味での感染症ではなくいわゆる日和見感染と呼ばれるも ので、一定量以上の、つまり、体が許容できる閾値を越えて細菌が体内に入ってくるこ とによって炎症が起きその炎症の進んだ結果、歯を支えている骨が自分から溶けてい く症状を歯周病と言うんだよ。 (赤丸部分を見ると、左右の歯を支える骨と比べて、溶けているのが分かります。画像をクリックするとハッキリと見えます。) 患者:歯ではなく骨が溶けるんですか?? 森本:そう、歯を支えている骨が溶けていくんだね。 そもそも、歯と歯肉の間には歯肉溝(ポケット)という溝があって、0.5mm~2mmの溝 があるのが正常なんだね。 食事をすると当然歯にプラーク(歯垢)がつくよね。そうすると、歯肉溝から透明の液体 が出てきて歯肉溝に入ってきたプラークを押し出すんだよ。 つまり、プラークが入ってきては出し、入ってきては出しと言いう作業を繰り返しているん だね。 (左の図が正常な状態。赤丸部分が歯肉溝(ポケット)。右の図は歯肉炎の状態。左の図と比べてポケットが広がっているのが分かります。画像をクリックするとハッキリと見えます。) 患者:うーん、やはり人間の体って凄いですね。ちなみに、その液体は唾液なんですか? 森本:いや、唾液ではなくて免疫力の高い浸出液なんだよ。 で、何らかの原因でプラークが浸出液によって追い出されずに溜まってしまうと、歯肉溝 にプラーク内の細菌が侵入してくる。 人間の体は体内に細菌が侵入してくると当然免疫作用が働くよね。その結果として歯肉 が赤く腫れてくる。これがいわゆる歯肉炎と呼ばれるもので歯周病の始まりなんだよ。 患者:少し怖くなってきましたね。 森本:そう、これから先はもっと怖くなるよ。で、この炎症がひどくなって歯を支える骨にまで迫 ってくると最終的には骨炎になって骨が壊死してしまう。 だから、“毒素”が歯を支えている骨に迫ってくると骨は「ヤバイ」と思って、破骨細胞と いうものを活性化させて骨を壊してしまう。これが歯周病なんだよ。 (歯周病患者の写真。) 患者:プラーク内の細菌と体内の免疫力との戦いの均衡が崩れた時に体の正常な防衛反応 の結果として歯周病が起こるということなんですね。 森本:そういうことだね。 続きを読む #
by morimoto-dc
| 2007-05-21 00:00
| 歯周病
前回の続き
患者: なるほど、外側からの力も虫歯に関係しているんですね。 森本:それを僕ら歯科医は外力と呼んでいる。で、歯の表面はエナメル質 という硬いもので覆われてるんだけど、その内側は象牙質といって エナメル質より少しやわらかい構造となっている。 外力によって、クラックが入ってしまうと、クラックから簡単に酸が 象牙質に浸入してしまう。 患者: 対応策ってあるんですか? 森本: あるよ。フッ素を歯に塗ってやると歯質は強固になる。フッ素を塗っ た歯は口の中のphが4.5にならないと溶け始めないんだよ。 患者: フッ素を塗ってないと歯はph5.5で溶け始めるんでしたよね。フッ素 が歯にイイと聞いたことがあるんですけど、本当だったんですね。 森本: そうなんだよ。だから、年に3~4回程度歯科医院でフッ素を塗布して もらうと、クラックがあってもフッ素によってある程度は修復される んだよ。 患者: 外力っていうのは歯並びと関係があるのですか。 森本: そう、咬合力、噛み合わす力が影響している。虫歯になってからの治 療はもちろんだけれども、虫歯そのものの予防の為に、機能的に正し い歯並びに誘導してあげることが僕ら歯科医の務めでもあるんだよ。 正しい歯並びだと虫歯予防はもちろん、歯周病の予防にもつながるし ね。 患者: なるほど、今までの先生のお話で、虫歯になるメカニズムが良く分か りました。同時に虫歯が食生活習慣病であるということも納得できま した。森本先生、どうもありがとうございました。 森本: どうもありがとうございました。 #
by morimoto-dc
| 2007-05-19 00:00
| ムシ歯
前回の続き
森本:でも、中には、子供に甘いものを与えてダメという歯医者さんもいるけど 子供はチョコレートとか甘いものを食べたいよね。 患者: 大人の私でも食べたいですが・・・(笑)。 森本: そうだよね(笑)。子供にオヤツを与えるのは全然OKだけど、与えるなら、 いつ与えるかを考えて与えましょうということだね。 (下図を見ると、ゴハンとゴハンの間に間食すると、歯の溶解が一気に進む ことが分かります。クリックで図がハッキリと見えます。) 患者: これで安心して甘いものを食べることができますね。虫歯の原因はこれだけな んでしょうか? 森本: いや、他にも原因があるんだね。今までの話で、歯が酸によって溶けるのは分 かったよね。 患者: はい、分かりました。 森本: では、酸によって歯が溶けるのなら、歯の表面全部が溶けて虫歯にならないと おかしいよね。でも、実際は全部ではなく歯と歯の間などの一部分が虫歯にな っている。これは、何でなん?ということになるよね。 患者: そうですね。何でなんですか? 森本: それは何故かというと、普段、口を動かしていると、自然と歯と歯が接触して いるんだよ。歯ぎしりとかもそうなんだけど。歯と歯が接触した時の衝撃がダ イレクトに脳やあごの骨などに伝わらないように歯が揺れて衝撃を吸収してい るんだよ。 また、歯は、成長と共に動くし、常に隣同士の歯と歯が接触して擦れている状 態にある、このような部位から虫歯になっていくんだよ。 更に、こういう箇所は、歯磨きをしても中々磨ききれないからプラーク(歯垢) が溜まっていっちゃう。毎日、フロスでの掃除も中々出来ないよね。 加えて、こういう箇所にはクラックといってヒビが入っていることが多い。この クラックの中に酸が入ってしまうと唾液の力では対応しきれなくなって虫歯に なってしまうんだね。 続きを読む #
by morimoto-dc
| 2007-05-18 00:00
| ムシ歯
前回 の続き
森本:ところが、食事と食事の間に間食をすると、歯が修復される間もなく口の中で 再び酸がつくられ、口の中のpHが低下して歯が溶け続けてしまう。 ついには、歯の修復が追いつかなくなって、虫歯になってしまうんだね。 患者:でも、間食をしないっていうのは現代人にとってはキビシイ話ですよね。少な くとも私はムリです。 森本:そうだよね。で、ここに興味深いデータがあるんだけど、スウェーデンのビペ ホルム精神病院で2つのグループに分けて実験をしたんだよ。一つは食事が終わ ってすぐにトフィー(キャラメルのような甘いお菓子)を食べさせたグループ と、二つめはいつでも食べたい時にトフィーを食べさせたグループに分けたと ころ、食事の時だけ甘いものを食べさせると、虫歯の発生は少ないんだけど、 食事と食事の間にオヤツとして甘いものを自由に食べさせると、虫歯の数が著 しく増加することが分かったんだよ。 患者:それはビックリな話ですね。 森本:そう、しかも、ゴハンとゴハンの間にオヤツとして8個食べた人より、3倍の 24個のトフィーを食事の時間ゴハンと一緒にに食べた人の方が、虫歯の発生 は少なかったんだよ。 患者:その話は更にビックリな話ですね。 森本:これで分かったように、食べ方が非常に重要なんだね。 患者:なるほど、それで『虫歯は食生活習慣病』ということなんですね。 森本:そうなんだよ。分かった? 患者:非常に良く分かりました。 続きを読む #
by morimoto-dc
| 2007-05-17 00:00
| ムシ歯
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